久しぶりにカメムシ液を浴びる
十日町市の冬と言ったら雪、春と言ったら残雪。
まるで符牒のようなこの言葉も、今年にだけは当てはまりませんでした。
戦後最低の記録が65センチだそうですが、今年はこれを更新したんじゃないでしょうか。笹山も、竪穴住居にかぶせた特注「滑雪シート」も活躍のときが来ず、どこか寂しげでした。
せっかく雪がないんだから、いろいろエンジョイしちゃおうぜと思っても、今度は別の災禍がやってきそうで、なかなかそうもいかない状況です。
しかたないので、部屋を片付けたり、窓のサンに挟まったままのカメムシ君たちを追い出したりしてみたら、何せ久しぶりだから匙加減がわかりません。見事に怒らせてしまい、久しぶりにあの匂いを浴びる羽目になりました。
もはや何をしたらいいのかわからなくなりました。
でもそれなりに部屋は片付き、ちょっとすっきりしました。これから漏れなく大量のごみを処理するお仕事が待っています。
阿部
(2020年04月10日)
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縄文レストラン
来年度、笹山遺跡で新たなプログラムを行うことになっています。
いままで「笹山縄文カレッジ」として色んなワークショップを行ってきたところですが、新たに「体感プログラム」を加えます。
仮にカレッジのほうがモノを「作る系」だとするなら、新しい体感プログラムはモノを「使う系」だと思ってもらうと分かりやすいかもしれません。しかも観光と手を結んでいくという、教育委員会の部局としてはちょっとアクロバットな。
ところで、作るのも使うのも同じくらい楽しいわけですが、「使う系」はなんでいままで少なかったのでしょう。
ひとつには、考古学の流れと関係があるかもしれないと僕は思います。考古学は出土遺物に基づいて、特に製作の過程を分析することが多かったので。
もうひとつあげるとするなら、お金や労力の問題かもしれません。
作るための材料は安いけど、使うための完成品を用意するのは大変だという・・・・世知辛い話ですみません。
でも最近は、出土資料の種類が豊富になってきて、またそれに伴って色んな分析科学が増えてきました。お蔭で製作だけでなく実際の使用の過程も調べることが出来るようになってきて、もはや本来は目にすることのできない行為の復元まで手が届く気がしてきた、というところです。そしてありがたいことにこういう使う系プログラムに対して補助金がつくことも多くなりました。これで二つの問題ともクリアできて、実現にこぎつけられるわけです。ありがたや。
来年度、笹山遺跡で「縄文レストラン」をはじめます。それも縄文料理を復元住居で、ではなくその斜め上、料理家に監修してもらう縄文的料理を野外レストランで提供することになります。この体感プログラムは今までより明らかに多くの人の心を躍らせるだろうと思います。
まだまだ準備段階ですが、僕自身もワクワクしています。みなさんもどうかお楽しみに!
調査員 阿部
(2019年11月28日)
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縄文女子旅
今日は「縄文女子旅」がツアーでいらっしゃるとのことで、解説などさせていただきました。
笹山縄文館のなかで、収蔵品の土器を見てもらい、お好みのものがあれば持っていただいたり、写真を撮ったり。
土器をもたせてくれるところはやっぱりあんまりないのか、とても喜んでもらえました。土器は、ある意味で木製の民具よりも頑丈で、汚れても壊れても戻しやすいのがいいところかもしれません。
壊れたら大変でしょう!と思うかもしれませんが、だいたいがもともと壊れてるのです。もちろん十分に注意しながらですし、実際に壊されたことは一度もありません。実際に手にとって本物の感覚を知っていただけたら何よりと思ったりします。
お昼には竪穴住居で一緒にご飯を食べて座談会。地元からもお手伝い(女子)が来たりして、どういったらいいのかわかりませんが、なんか和気藹々としてました。なぜ女子旅なのかと訝る意見もありましたが、その雰囲気を感じて妙に納得しました。
そして同時に、男子旅はないかもな〜、とも思いました。差別するつもりはないんですけど、、ごめん男子。
阿部
(2019年10月06日)
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Oh!むかしマルシェを開催しました
今回の店舗数は18、お客様は470名以上お越しくださいました。どちらも目標を超えた数です!大成功!
遺跡でのマルシェという事でちょっと特殊でしたが、個人的には「おおむかしポイント」のおかげで興味深い体験が出来ました。縄文っぽい、あるいは大昔っぽいことでもらえるポイント。値段の高い低いでポイントがつくわけではない、そのこと自体が縄文っぽいのでした。これは運営の「いおサポ」さんとの話し合いでふっと出たアイディア。思いついたときの興奮はいまでも覚えています。
ちなみにポイントを集めてもらえる「パン」には少々驚きました。縄文時間を感じられる仕掛け。これもアイディアものです。今後、名物の予感がします。
我が文化財課は、縄文館の3階で収蔵室を開放して、復元した土器の陳列棚をご覧いただきました。もちろん学芸員の解説付き。店舗が3階にもたくさんあったおかげで、ついでに見にいらっしゃる方が多くて嬉しい悲鳴でした。
もちろん笹山じょうもん市の時も開放しているのですが、そのことを知らない地元の方もいらっしゃり、「え、見れたの?」と驚いてました。イベントの空間レイアウトの影響の大きさを物語っています。マルシェの開催によって、逆に笹山じょうもん市での課題が見えたような気がします。
今回、駆けつけてくださった店舗の方々の表情が生き生きとしていたのが印象的でした。その場を「楽しもう」という気持ちがあふれているように思いましたし、それにあてられてか、こちらも何だか楽しくなる、そういう雰囲気がありました。
今回も、運営は伊乎乃の里・縄文サポートクラブさんでした。ご尽力に感謝いたします。また、地元中条地区からは、中条農商工れんらく会さんが店舗を出してご協力くださいました。大変ありがたいことです。それから、準備作業の中で、マルシェを主催した経験のある方々から多くの助言とお力添えを頂戴しました。もしゼロから準備していたら、果たして本当にスタートできたのかどうか。ここに個人名をあげるのは何ですが、H原さん、H島さん、K日さんをはじめ、皆様に心より御礼申し上げます。
調査員 阿部
(2019年09月29日)
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青春18土器作り 最終日
雨の予報があったので開催が危ぶまれた今日の土器作り。
最終日は、乾燥工程の終わった土器を焼く予定だったので、雨が降れば中止になります。もしも焼いてる最中に濡れてしまったら、・・・パーン!という音と共に壊れますから、当然です。
でも、昨夜、焼いている予定時間に雨は降らなさそうという予報になったので、決行しました。
みなさんとても素晴らしい出来で、先生の小澤さんも驚いてました。「みんな上手!」。焼きで1つも割れることなく、見事完成。
やった!!本当に良かった!!
ただ、アクシデントがあって、焼く前に割ってしまった残念な土器もありました。でも、焼いて見たら妙にリアルになって、これはこれでまた良いね、という温かな雰囲気でした。
最後はやっぱり火焔型土器の鍋でシメ。味付けは塩だけ、なんてストイックな縄文鍋もあるそうですが、やっぱり美味しくしましょう。
ビバ、味噌!
調査員
(2019年09月28日)
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耳飾りがありました
遺物洗い4日目・・・だったかな、テキトーですみません。
諸事情で毎日できないのが残念ですが、それでも洗うと色々見えてきて楽しいものです。
今日は、耳飾りが出土していたことが分かりました。
耳飾りいうと、キラキラ系をイメージされるかもしれませんが、縄文の遺跡から出土するのは普通、土か石でできたものだけ。骨とか角とか植物とかは、もうそれだけでレア。
金属なんていったら、お目にかかるのは高師小僧*くらいですから、キラキラ系なんて夢のまた夢だと思っていただくのが賢明というものです。
*高師小僧がなにかはWikipedia先生をどうぞ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E5%B8%AB%E5%B0%8F%E5%83%A7
出土する耳飾のスタンダードは、だいたいがホイールタイプで、車のホイールさながらに耳たぶにはめ込むものです。今回のは径4センチくらい。大きいのになると8センチくらいになるそうですから、普通サイズでしょうか。
ちょっと壊れていたけど、土器の破片数千点に対してに1点という頻度ですから、ある意味レアもの。出るとやっぱりうれしいものです。
調査員
(2019年09月27日)
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埋め戻し 終わり
今日もせっせと埋め戻し。
そして終わりました。
見てください、綺麗なもんです。
といっても調査はまだまだ続きます。
意外と皆さんご存知ないんですが、ここからの方がはるかに大変なのです。
さて、、まずは遺物洗いだ!
調査員
(2019年09月13日)
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埋め戻し2日目
先日、笹山あっこん部の活躍をレポートした論考があるところの賞を受けたということで、京都まで表彰式に行ってきました。
みなさんの地道な努力と遠方を含む様々ご協力の賜物でして、大変うれしい出来事でした。
これについては、また別に報告しますが、表彰式のついでに国際博物館会議にも顔を出したせいで、現場が1週間ほど止まっていました。
本日埋め戻しを再開。
ですが、今日の人員は33パーセント減のため、結局終わらず、次回に持ち越しになりました。うー、、最後の最後で延び延びです。
飛ぶ鳥あとを濁さず。
最後までしっかりやりますよ〜。
調査員
(2019年09月10日)
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埋戻しの土は低空飛行の散弾銃
埋戻しが始まりました。
今回の埋め戻し作業は、なんと手作業!スコップで戻します。
重機でやったら一瞬で終わるものを人力だと1日くらいかかるかもしれません。
すご〜〜〜く久しぶりで、学生時代を思い出しました。大学の学術調査は、今回のように狭い範囲が行うのが常なので、やはり人力で戻すのです。
学生は若いので「エンピ投げ大会」とか言いながら、スコップに盛った土をいかにきれいな形のまま遠くに、あるいは高く投げられるかと競ったものです。エンピ(円匙)とは、丸型のスコップのことです。ちなみに四角いのはカクスコ(角スコ)。
誰かが投げたエンピの形の土を、ほかの人が追って投げた土で撃墜する、という高度な技をみたことがあります。また、東久留米市にバイトで行ったとき、自分で投げた土を自分で撃墜するという超高度な達人技を見せられたことがあります。度肝を抜かれました。(僕は何回やってもできませんでした。)
が、今回のメンバーはシルバー的なので、そうはいきません。
放り投げられた土は、散弾銃のごとくで、しかも近距離、低空飛行なのでした。そのあまりの違いに、どういうわけか「おお」と不思議な感動を覚えました。あのエンピ投げは、もう見ることはないのかもしれません。
調査員
(2019年09月02日)
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間も無く終わり
今日は全体撮影の日。
調査区が小さいので、脚立に乗って撮影。と言っても、なんだか殺風景。
断ち割りのための四角い穴ばかりなので、どれが遺構か大変わかりづらい状態だからです。
遺構だけが見える状態のほうがいい!と思う調査員はきっとたくさんいると思います。そういう写真を撮るには、手順を工夫しなければなりません。
まず、例えば柱穴が見つかったらその内部の土の上の方だけ半截し、断面の地層を測量して記録します。それから、残りの半分を掘り、遺構を掘りくぼめたような状態にしておきます。同じ時代の柱穴全部についてこういう状態にして写真を撮るのです。こうすると、柱の配置がわかりやすい写真になります。
その後、断ち割りをして、残りの下部分の断面や、底面を測量記録するのです。
しかし、この場合の問題点は、なんと言っても測量が二段階になることで、随分と手間が増えてしまうことです。美しい写真のために調査計画の全体を犠牲にすることが良いのかどうか?
僕は柱の配置などは図面で再現されれば良く、むしろそのための図面だと思っているので、記録のための写真とは異なる美写真を撮るためだけに大きな労力はかけないほうが良いと思っています。
さて、調査は間も無く終了します。この深〜い柱穴を一度は見てみたいというそこの貴方は、木曜日が見納めの日になるかと思います。見学自由です。
調査員
(2019年08月27日)
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またつまらぬものを洗ってしまった
大学の頃から、発掘用具は毎日洗うものと習慣づけられていました。
そのせいか、色んなところの発掘でも洗っていたし、そうするように作業員さんにもお願いして来ました。誰も異議を唱えませんでしたし、周りの調査員もそうしている人ばかりだったような気がします。
が。
十日町に来て初めて、洗わないという習慣がある、と
知らされた時は本当に驚きました。
え?!うそ?
それからしばらく、なぜ洗わなければならないんだっけ?、と真剣に考え込んでしまいました。
水洗いするのは倉庫が砂だらけになるのが嫌だとか、翌日の気分のためとか、道具を大事に扱うことで壊れるのを遅くするとか、いろんな効果があるとは思うのです。
でも、一方でよく考えてみると、塗装のある一輪車とか一部の移植ゴテのような用具は、洗うときに他の金属製用具で擦るたびに塗装が剥げるので、劣化を早めるかもしれないし、また、両刃鎌やジョレンの木質部分は、水洗いによる浸水と乾燥を繰り返すと、早く劣化するかもしれない、、いや劣化するはず。
これはもしかすると、長年無駄な、というか逆効果のことをして来たのかもしれない。本当のところ、どっちがいいのか。
などと毎日思いながら、今日もまたまた洗ってしまいました。だれかいい答えをお持ちの方がいらっしゃれば、こっそり教えて下さい。
調査員
(2019年08月26日)
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コンパクトデジカメ大活躍
遺構の測量も、いまや写真の時代です。
2D画像(普通の写真画像)を組み合わせて、正射投影の画像を作ることができます。
セクションや遺構埋土の断面もこれで記録できますし、土がボソボソで分層の線が引きづらいなんてことがあっても、大量に写真を撮って合成し、画像上で線を引くこともできちゃう。図面の作成が楽になります。
さらに、2D画像を沢山撮って、合成して3D画像にもできますから、これを任意の位置でバサッと切れば、断面の外形線が出来上がります。しかも一つだけじゃなく、二つでも三つでも、縦でも横でも。
格段に業務効率が上がっているのを実感しています。
土器の圧痕調査のときに、接写できてF値が小さい(明るく撮れる)コンパクトデジカメの威力を体感しましたが、今度は現場でも多くの出番があることになりました。遺構の中が暗いとか、狭いとか、そういうときはコンパクトデジカメでしか撮影できません。
かつては大きくてゴツいカメラに憧れたもので、「コンパクトデジカメなんか・・・」と若干バカにしていたことがありましたが、もうコンパクトデジカメなしでは分析も現場も成り立たなくなってきました。
調査員
(2019年08月23日)
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コオロギの糞
NHKの放送でひところ話題になった「ヤノマミ」。
Wikipedia先生↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%8E%E3%83%9E%E3%83%9F%E6%97%8F
矢野真美さんとかではなく、アマゾンで狩猟採集をして生活する部族の名前です。
絶ち割りのピットに落ちたコオロギを見ていたら、本当にどうでもいいことですが、ふとヤノマミが言ったという言葉を思い出しました。
コオロギの糞が体に落ちると、赤くなって痒くなる
ヤノマミは、夜中、蠢くサソリとか虫とかいっぱいいて危ないので、家の中にハンモックを吊るして寝ています。で、地上からの攻撃はこれで回避できるのですが、上からの攻撃は避けられない。なんと、天井に居るコオロギが糞を落としてくるらしく、それが当たると赤くなって痒くなるんだそうです。
ただ、本当にコオロギのせいなのかは謎、とのこと(NHKの取材班は夜目が効かないため検証できない)。
絶ち割りピットに落ちているコオロギを助けている作業員さんを見かけました。優しいお方だなあと思うと同時に、ヤノマミの言葉を思い出し、明日、彼の手をジ〜〜〜ッと観察してみようと心に誓ったのでした。
調査員
(2019年08月22日)
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合板だらけ
十日町のお盆休みは長いです。
ほぼ1週間続きます。前後の土日も合わせると9日間。
作業計画もそういう前提で立てています。
でも、体はそういうわけにもいかず、9日ぶりに戻った現場の初日はかなりきついものがありました。
昨日は暑さも手伝って、「やばいんじゃないか」と恐ろしくなるくらい疲れ果てました。もしかすると熱中症だったのかもしれません。気をつけたいものです。
久しぶりに調査区を見ると、なんだか合板だらけです。合板は、人が落ちないようにするためとか、遺構を日光や雨から守るためとか、そういうのに使うふたのようなものです。
だいぶ前に掘ったところはずっと合板がのっているので、中身を忘れがち。で、久しぶりにあけてみて「あ〜そうか、これか」となることもしばしばです。
だいたいは虫やカエルやネズミが落ちているので、慣れてくると何が落ちているかちょっと楽しみになってきます。さ〜て今日は何が入っているかな〜♪・・パカっと
遺構のことを完全に忘れかけていたりしませんよ、もちろんです。
ちなみに今日は、コオロギ、ゴミムシ、太いミミズ、アオガエル、というラインナップでした。あと、水のたまったブルーシートの中にはなぜかミズスマシがいました。
「なんでだ」
それを見たほぼ全員がそう言っていたような気がします。遺構のことを完全に忘れかけていた可能性はすこしもありませんよ。もちろんです。
調査員
(2019年08月20日)
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ショウリョウバッタは見ている
明日からお盆休みです。
圧倒的に帰省されるお宅の多い十日町は、この時期みんなお休み。作業員さんがいないので現場作業ももちろん止まります。
11:02に西に向かって黙祷し、明日から連休だしもう今日はやめにして解散か?と思っていたところ、、現場に初めてショウリョウバッタがやって来ました。大量にいてもショウリョウバッタとはこれいかに、などとダジャレを飛ばされるアイツです。言っていたのは僕だけという噂もあります。
でもホントのところ、その名の語源は何なのか。検索したら、漢字ではこう書くとのことでした。
精霊蝗虫
お盆の時期に現れるからだそうです。
なんだかキリがいいからとか明日から休みだから解散するなんてのはちょっと違うような気がして来て、やっぱり頑張んなきゃなと思い直し、作業を進めることにしました。
皆さんも良いお盆をお過ごしください。
なお、上の画像にショウリョウバッタさんがいます。見つけられますか?
調査員
(2019年08月09日)
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