間も無く終わり
今日は全体撮影の日。
調査区が小さいので、脚立に乗って撮影。と言っても、なんだか殺風景。
断ち割りのための四角い穴ばかりなので、どれが遺構か大変わかりづらい状態だからです。
遺構だけが見える状態のほうがいい!と思う調査員はきっとたくさんいると思います。そういう写真を撮るには、手順を工夫しなければなりません。
まず、例えば柱穴が見つかったらその内部の土の上の方だけ半截し、断面の地層を測量して記録します。それから、残りの半分を掘り、遺構を掘りくぼめたような状態にしておきます。同じ時代の柱穴全部についてこういう状態にして写真を撮るのです。こうすると、柱の配置がわかりやすい写真になります。
その後、断ち割りをして、残りの下部分の断面や、底面を測量記録するのです。
しかし、この場合の問題点は、なんと言っても測量が二段階になることで、随分と手間が増えてしまうことです。美しい写真のために調査計画の全体を犠牲にすることが良いのかどうか?
僕は柱の配置などは図面で再現されれば良く、むしろそのための図面だと思っているので、記録のための写真とは異なる美写真を撮るためだけに大きな労力はかけないほうが良いと思っています。
さて、調査は間も無く終了します。この深〜い柱穴を一度は見てみたいというそこの貴方は、木曜日が見納めの日になるかと思います。見学自由です。
調査員
(2019年08月27日)
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またつまらぬものを洗ってしまった
大学の頃から、発掘用具は毎日洗うものと習慣づけられていました。
そのせいか、色んなところの発掘でも洗っていたし、そうするように作業員さんにもお願いして来ました。誰も異議を唱えませんでしたし、周りの調査員もそうしている人ばかりだったような気がします。
が。
十日町に来て初めて、洗わないという習慣がある、と
知らされた時は本当に驚きました。
え?!うそ?
それからしばらく、なぜ洗わなければならないんだっけ?、と真剣に考え込んでしまいました。
水洗いするのは倉庫が砂だらけになるのが嫌だとか、翌日の気分のためとか、道具を大事に扱うことで壊れるのを遅くするとか、いろんな効果があるとは思うのです。
でも、一方でよく考えてみると、塗装のある一輪車とか一部の移植ゴテのような用具は、洗うときに他の金属製用具で擦るたびに塗装が剥げるので、劣化を早めるかもしれないし、また、両刃鎌やジョレンの木質部分は、水洗いによる浸水と乾燥を繰り返すと、早く劣化するかもしれない、、いや劣化するはず。
これはもしかすると、長年無駄な、というか逆効果のことをして来たのかもしれない。本当のところ、どっちがいいのか。
などと毎日思いながら、今日もまたまた洗ってしまいました。だれかいい答えをお持ちの方がいらっしゃれば、こっそり教えて下さい。
調査員
(2019年08月26日)
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コンパクトデジカメ大活躍
遺構の測量も、いまや写真の時代です。
2D画像(普通の写真画像)を組み合わせて、正射投影の画像を作ることができます。
セクションや遺構埋土の断面もこれで記録できますし、土がボソボソで分層の線が引きづらいなんてことがあっても、大量に写真を撮って合成し、画像上で線を引くこともできちゃう。図面の作成が楽になります。
さらに、2D画像を沢山撮って、合成して3D画像にもできますから、これを任意の位置でバサッと切れば、断面の外形線が出来上がります。しかも一つだけじゃなく、二つでも三つでも、縦でも横でも。
格段に業務効率が上がっているのを実感しています。
土器の圧痕調査のときに、接写できてF値が小さい(明るく撮れる)コンパクトデジカメの威力を体感しましたが、今度は現場でも多くの出番があることになりました。遺構の中が暗いとか、狭いとか、そういうときはコンパクトデジカメでしか撮影できません。
かつては大きくてゴツいカメラに憧れたもので、「コンパクトデジカメなんか・・・」と若干バカにしていたことがありましたが、もうコンパクトデジカメなしでは分析も現場も成り立たなくなってきました。
調査員
(2019年08月23日)
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コオロギの糞
NHKの放送でひところ話題になった「ヤノマミ」。
Wikipedia先生↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%8E%E3%83%9E%E3%83%9F%E6%97%8F
矢野真美さんとかではなく、アマゾンで狩猟採集をして生活する部族の名前です。
絶ち割りのピットに落ちたコオロギを見ていたら、本当にどうでもいいことですが、ふとヤノマミが言ったという言葉を思い出しました。
コオロギの糞が体に落ちると、赤くなって痒くなる
ヤノマミは、夜中、蠢くサソリとか虫とかいっぱいいて危ないので、家の中にハンモックを吊るして寝ています。で、地上からの攻撃はこれで回避できるのですが、上からの攻撃は避けられない。なんと、天井に居るコオロギが糞を落としてくるらしく、それが当たると赤くなって痒くなるんだそうです。
ただ、本当にコオロギのせいなのかは謎、とのこと(NHKの取材班は夜目が効かないため検証できない)。
絶ち割りピットに落ちているコオロギを助けている作業員さんを見かけました。優しいお方だなあと思うと同時に、ヤノマミの言葉を思い出し、明日、彼の手をジ〜〜〜ッと観察してみようと心に誓ったのでした。
調査員
(2019年08月22日)
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合板だらけ
十日町のお盆休みは長いです。
ほぼ1週間続きます。前後の土日も合わせると9日間。
作業計画もそういう前提で立てています。
でも、体はそういうわけにもいかず、9日ぶりに戻った現場の初日はかなりきついものがありました。
昨日は暑さも手伝って、「やばいんじゃないか」と恐ろしくなるくらい疲れ果てました。もしかすると熱中症だったのかもしれません。気をつけたいものです。
久しぶりに調査区を見ると、なんだか合板だらけです。合板は、人が落ちないようにするためとか、遺構を日光や雨から守るためとか、そういうのに使うふたのようなものです。
だいぶ前に掘ったところはずっと合板がのっているので、中身を忘れがち。で、久しぶりにあけてみて「あ〜そうか、これか」となることもしばしばです。
だいたいは虫やカエルやネズミが落ちているので、慣れてくると何が落ちているかちょっと楽しみになってきます。さ〜て今日は何が入っているかな〜♪・・パカっと
遺構のことを完全に忘れかけていたりしませんよ、もちろんです。
ちなみに今日は、コオロギ、ゴミムシ、太いミミズ、アオガエル、というラインナップでした。あと、水のたまったブルーシートの中にはなぜかミズスマシがいました。
「なんでだ」
それを見たほぼ全員がそう言っていたような気がします。遺構のことを完全に忘れかけていた可能性はすこしもありませんよ。もちろんです。
調査員
(2019年08月20日)
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ショウリョウバッタは見ている
明日からお盆休みです。
圧倒的に帰省されるお宅の多い十日町は、この時期みんなお休み。作業員さんがいないので現場作業ももちろん止まります。
11:02に西に向かって黙祷し、明日から連休だしもう今日はやめにして解散か?と思っていたところ、、現場に初めてショウリョウバッタがやって来ました。大量にいてもショウリョウバッタとはこれいかに、などとダジャレを飛ばされるアイツです。言っていたのは僕だけという噂もあります。
でもホントのところ、その名の語源は何なのか。検索したら、漢字ではこう書くとのことでした。
精霊蝗虫
お盆の時期に現れるからだそうです。
なんだかキリがいいからとか明日から休みだから解散するなんてのはちょっと違うような気がして来て、やっぱり頑張んなきゃなと思い直し、作業を進めることにしました。
皆さんも良いお盆をお過ごしください。
なお、上の画像にショウリョウバッタさんがいます。見つけられますか?
調査員
(2019年08月09日)
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地層
「発掘」は単に「掘る」ってことを意味するわけですが、「発掘調査」と言った途端にちょっと違うものになります。
考古学の場合、「何が出るか」のほかに、「どのように出るか」とか、「どのような状況にあるのか」なども調べます。過去の出来事を復元するためなので、よく警察の現場検証に例えられることがあります。
今日は、柱穴跡を断ち割ったときに見える自然堆積層を眺めていました。(その前に自然堆積なのかどうかを判別して、それからの話ですが。)
表土は有機物が多い黒い地層=畑の土でしたが、その直下には分級の悪い地層、つまりは色んなサイズの石が混ざった状態の土石流堆積物が堆積していました。この調査区では、厚さがだいたい10〜20センチです。
で、さらにその下は細粒砂層でした(上画像。横断面。)。この層が厚くて、70〜90センチあります。
なかを見ると、すごく細かい砂の積もった層と、それよりは少し大きな砂粒の積もった層とが何度も繰り返して堆積しているのがわかります。細かい砂の堆積は、わりと緩やかな流れで形成されたことを示していて、砂粒の大きさが違うということは、流れの早さの違いを表しています。ですが、その違いは大したものではないので、流れが緩くなったり少し早くなったりしていた、ということがわかります。断続的に何度も似たような変化が生じていたことを示しているわけです。もちろん、一度にこんな堆積はできません。
この層の下に、縄文時代の遺構・遺物が出てくる層があり、どういうわけか、噂で「縄文集落は土石流に覆われた」という話を聞いたことがあります。初め聞いたときは、「へーそうなのかな」と思っていましたが、現物を見てそれははっきりと違うことがわかりました。昨年度の調査でも6年前の調査でも同様でした。現場検証が大切なのです。
調査員
(2019年08月08日)
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落ちないでね
こんなに暑くても土の中は関係ないのか、メメズ(ミミズのこと)たちがやたらと出てきます。深く掘った断ち割りの穴には特に多いです。
黒土の中から出てくるならまだしも、その下の赤土からも出てきます。その出てくる瞬間も目撃してしまいました。でも不思議に思ったので、農業を知る作業員さんに聞いてみました。
「この赤土にも栄養があるんですかね?
「いや、ないね。畑に使えるのは黒土だけだ。」
じゃあ、この赤土から這い出てくるメメズたちは、いったい何を栄養にしているのか・・・?いやきっと栄養がほんのちょっとだけあるんでしょう。すごい適応力です。
さて、そんな断ち割りのための穴も約1メートル近くになりました。これで打ち止めではあるものの、もしも落ちたりしたら大変です。メメズならさほど気にしませんが、人間様の場合はそう言ってられません。きっと怪我しますし、大変です。
だからあっちの穴もこっちの穴も合板でふたをしました。どうか最後までけが人が出ませんように。いつもそう思います。
調査員
(2019年08月07日)
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柱穴の底は縄文層
暑い・・・・暑すぎる。
若干意識朦朧とするなか、今日は柱穴跡の断ち割り。
作業員さんたちのタフさに敬服した一日でした。
断ち割ってみたら、約80センチほどの深さに及んでいることがわかりました。
なんでこんなに深いのだろう?
前の調査でも、7号建物と6号建物も同じような深さでしたから、この2棟だけちょっと特別だったのかもしれません。
掘削が柱穴跡の底に達したころ、「や〜たらと土器が出るな〜」という作業員さんの声にピピンときました。
中を覗いてみると、土器のほかにも炭化材が沢山あり、地層の色自体が全然違ってました。
そこは縄文層。
柱穴跡の底のほんの少し下に、縄文時代の地層があることが確認できたのでした。
思わぬ副産物に、調査隊のテンションが少しあがりました。
でも、そこは来年のお楽しみ!
調査員
(2019年08月06日)
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No.1はまだ調べる余地がある
今日は発掘をお休みし、別の案件を。
国宝に指定されている土器の調査です。
午前中に3点、午後に5点。
国宝の土器は57点あるので、その一部。
でもどれも国宝だから扱いには最大限の注意が必要です。ひとつひとつの動作で緊張を強いられ、どっと疲れました。
でも、思わぬ副産物というか、発見がありました。ナンバー1についてです。
1 炭化物がついている、わりとガッツリ。
ちゃんと使ってたってことの証拠ですし、それに年代測定や同位体比分析が出来るということになります。同位体比分析をすれば食べたものの大雑把な種類が分かる可能性があります。
2 突起を磨いてる
火焔型土器は一生懸命作っているのは分かるんですが、その後の栃倉式土器に比べると「磨き」が足りないイメージです。が、No.1は違いました。特に突起がツルツルです。これは最近の高精細レプリカには反映していません。残念。
3 鋸歯状口縁は2重
1重目を鋸歯状に乗せてから、外面側に細い粘土紐を貼り付けて作っているのです。貼り合わせの面が複数の場所でちょっとだけ見えたのです。これも高精細レプリカには反映していません。無念。
これからNo.1を作ろうなんていう人がいれば、参考になるかもしれません。
調査員
(2019年08月05日)
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たちわり
心頭滅却すれば火もまた涼し
といいますが、毎日毎日暑い暑いとわめいている僕などは、その境地から最も遠いところにいるんだろうなと自覚する今日この頃です。
さて、目下、作業員さん達が掘る柱穴跡の埋土(穴の中の土のこと)について、人によって見え方や硬さの感覚が違うようで、あっちの穴とこっちのは穴とで掘った深さが全然違ってきてます。
さて、どうしたものかと思い、今日は一つの柱穴跡を断ち割ってみることにしました。
「断ち割り」とは?
遺構と遺構周囲の土とを同じ垂直面でバサッと切って、半分を掘り上げてしまうことです。当然以降は半分なくなってしまいます。普段は遺構の内部だけを半分にする「半截」(はんせつ)とか「半裁」(はんさい)という掘り方をしますが、それでも内部の様子が分かりづらいときは断ち割りをします。
断ち割りをすれば、遺構内だけを掘っているときよりも、周囲の土といっしょに真横から観察できますから、その違いがはっきりわかるようになります。また、こうすれば現場にいるみんなで情報を共有できますので一石二鳥なのです。
じゃあなぜ最初からそうしないのかというと、本来は掘らなくていい遺構周辺の土をたくさん掘ることになるので、大変な労力がかかるからです。いつも断ち割りをやってたら身が持ちません。
ですが、いい加減、深さや幅の違う柱穴跡が増えてきたので、耐えかねてこうすることにしたのでした。
結果として、内部にあった擾乱(じょうらん)されたような固くしまった土は人為的な埋土で、中央の脆くて真っ黒い土が柱の抜き取りの痕跡らしいことがわかりました。教科書通りでした。
掘っていた柱穴跡ごとに違いが出たのは、人為的な埋土と、自然的な埋土と、これらの混ざった土との区別が共有されていなかったためでしょう。いくつかの柱穴跡は、深さが掘り足りないものと、径が掘り足りないものの両方があります。
そんなわけで、今後、測量も一部やり直し。ヤレヤレという気持ちで迎える週末です。
調査員
(2019年08月02日)
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